【イ・ボミのスマイル日和】Vol.10 桃子さんの“勝負欲”は本当にうらやましかった
イ・ボミのSmile日和
2年連続賞金女王など輝かしい実績を残し、2023年に惜しまれつつも日本ツアーを引退したイ・ボミ。これまであまり語られてこなかった生い立ちや現役時代の秘話など、あらいざらい語り尽くす!
TEXT/Kim Myung Wook PHOTO/Takanori Miki

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- 2年連続賞金女王など輝かしい実績を残し、2023年に惜しまれつつも日本ツアーを引退したイ・ボミ。これまであまり語られてこなかった生い立ちや現役時代の秘話など、あらいざらい語り尽くす! TEXT/Kim Myung Wook PHOTO/Takanori Miki イ・ボミ 1988年生まれ。15、16年賞金女王。日本ツアー21勝のレジェンド >>前回……
私は気持ちを表に出すのが恥ずかしかった
日本ツアーで結果を出せた理由の一つは、たくさんの韓国の先輩や同僚たちがいてくれたことだと思います。同世代には韓国ツアーで優勝や賞金女王になるような選手が多く、“黄金世代”と呼ばれていたそうです。(申)ジエ、(キム・)ハヌル、(パク・)インビといった実力のある選手がたくさんいました。そして日本ツアーに先に挑戦していた韓国の選手たちも、母国でしっかり実績を残したうえで来ていたので、とても心強く感じました。
特に一つ上の(アン・)ソンジュオンニが、日本で韓国人として初めて賞金女王になったことは、「自分も努力すればできるんだ」と思わせてくれる大きな出来事でしたし、(姜)スーヨンオンニ、(李)チヒオンニ、(全)ミジョンオンニたちが日本で何勝もしている姿にも、たくさん勇気をもらいました。
今ではちょっと信じられないかもしれませんが、日本に来たばかりの時はすごく不安だったんです。でも、コースの状態や練習環境の良さを見て、「あ、これは努力すれば、きっと結果が出せる」と思えたんです。とても環境が良かったので「これで上手くならないはずがない!」と吹っ切れました。
最近は、日本ツアーにいる韓国の選手が少なくなってきていて、若いイ・ヒョソン選手なんかは、きっと寂しい思いをしているんじゃないかなと感じています。やっぱり歳が近くて言葉が通じる選手が数人いるだけでも、精神的にはすごく楽になれるんですよね。そういう意味では、私は本当にタイミングに恵まれていたなと感じます。
日本ではたくさんの選手たちと仲良くなりましたが、ゴルフに関しては「この選手のこの部分が欲しいな」と思うことが何度もありました。たとえば、当時賞金女王を争っていたテレサ・ルーさんの、長い手足を生かしたスウィング技術や、(笠)りつ子さんのシンプルで瞬発力のあるプレーなど。
(原)江里菜さんや(有村)智恵さんに関しては、やっぱり“言葉の力”がすごいなって。会話がウィットに富んでいて、しかもゴルフの実力もあって、ファンやスポンサーの方に伝える技術がとても高い。すごく尊敬しています。中でも一番うらやましいと思ったのは、(上田)桃子さんでした。それは彼女の“勝負欲”。韓国語では「スンブヨッ」と言うんですけど、勝利への強い欲望や意思のことを指します。
桃子さんは、勝ちたいという気持ちの裏にいつもたくさんの努力があって、もっと上手くなりたいという向上心がすごく強い選手でした。私が「誰かの何かを奪えるなら何が欲しい?」と聞かれたら、迷わず「桃子さんのスンブヨッ!」と答えます。プロスポーツの世界では、これが一番大切なことじゃないかなと思うんです。
もちろん私の中にも、勝ちたいという気持ちはありましたが、それを表に出すのがちょっと恥ずかしくて……感情を出すのは、少しだけにしていたんですよね。
でも桃子さんは、自分の言葉でしっかりと「勝ちたい」と伝えて、言葉に責任を持って努力し続ける姿勢を、みんなに見せていました。 昨年の引退試合でも、たくさんの後輩選手たちがセレモニーに参加していましたが、それはきっと、ゴルフへの向き合い方や生き方をみんなが見ていたからだと思います。私が桃子さんを見て感じたのは、“余裕の中に秘めた怖さ”っていうのが一番ぴったりかもしれません(笑)。すべてが準備されているからこそ心に余裕が生まれて、それがプレーにも表れていたんだと思います。
気兼ねなく話せる韓国の先輩たち。そして、豊かな人間性と確かな技術を持った日本の選手たち。そんな素晴らしい人たちとの出会いが、私のゴルフ人生にとって本当に大きな力になりました。
月刊ゴルフダイジェスト2025年10月号より


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