【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.872「見られると“ドキドキ”しますがそれは緊張ではなく快感なのです」
岡本綾子「ゴルフの、ほんとう。」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
>>前回のお話はこちら
- 米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。 TEXT/M.Matsumoto >>前回のお話はこちら 岡本プロはショットを打つときボールが飛んでいく弾道をどのようにイメージしているのでしょうか。そうした弾道のイメージは必要なのでし……
この間、地元のプロたちが出場する試合を観戦してきました。ツアーの試合にいつも出ている選手は身なりも振る舞いもキレイに見えましたが、あまり見かけないプロが少しだらしなく見えたのは、何か違いがあるのでしょうか。(匿名希望)
エンターテインメントの世界でも新人アーティストが、いつの間にかあか抜けていることがありますよね。
板につくというのでしょうか、空間になじみ、見る人の印象に違和感なく浸透していくということだと思います。
わたしたちプロゴルファーも同じです。
芝の上の舞台でプロだからできるショットやパット、そして全力プレーから生まれる感動するような試合展開などさまざまなパフォーマンスを、大勢のギャラリーに見てもらうことが仕事です。
プレーの内容はもちろん立ち居振る舞いやウェアにも、ギャラリーの視線は集まります。
カッコ悪い動きにファンがつくはずはありません。
ゴルフは上がってなんぼと言われますが、プロゴルファーはそれにプラスして、見られてなんぼだと思います。
新人でもベテランでも試合で身に着けるウェアのコーディネートや着こなしに関して、自分がプロであることの意識をきちんと持っていないと、契約しているメーカーさんに対しても礼儀を欠くと思います。
わたしがたまに解説をするステップ・アップ・ツアーの試合では、一生懸命プレーに集中してがんばっていますがウェアは上手く着こなせていないような選手を、しばしば見かけることがあります。
人は人の目で育てられ、周囲からの視線が大事です。
プロゴルファーは見てもらう仕事であり人を魅了する職業であるという意識を持ってほしいです。
もう少し踏み込んで言えば、人の目が育てるのは見た目だけではないと思います。
観衆に見守られながらプレーするプレッシャーに打ち勝ち、大観衆を感動させるのがスーパースターです。
誰も見ていないところで人の心を動かすような奇跡的なショットは生まれません。
スポーツは結果を選手とギャラリーで共有する。
それがスポーツの神秘です。
会場にはプレーを見る人がいる。
だから下手なプレーをすると恥ずかしくて穴があったら入りたくもなるけど、たった1人でラウンドしていたなら、そんな屈辱も感じません。
そう考えると、プロがプレーしているコース上には、ギャラリーよりももっと見ている人がいます。
それは、負けたくないと思っているライバルや目標とする好敵手たちです。
ライバルは、自分がどんなプレーをするか熱視線を送っています。
そこで下手なプレーはできないことで生まれるプレッシャーが、あなたを鍛え上げることもあります。
なかには多くの人に見られることで緊張して震えてしまうという人もいますが、わたしはそう思ったことはありません。
青木功さんが、「見られれば見られるほどドキドキするあの快感がやめられない」と昔言っていましたが、まさにわたしもそれと同じ感覚です。
プロは見られることが仕事ですから、見られて委縮するようなネガティブな感覚はなく、プロは常にポジティブな思考を持っています。
だから、ドキドキは気持ちいいと感じる選手が多いと思っています。
プロゴルファーだけでなく、どんな人も、多岐にわたるジャンルの多くの人から見られれば見られるほど、プレーのみならず、立ち居振る舞いや身なりなどすべてにおいて、必ず大きく成長することができると思っています。

「毎日コツコツ努力を積み重ねていることが迷いのない自信へとつながっていきます」(PHOTO by Ayako Okamoto)
週刊ゴルフダイジェスト2025年8月19・26日合併号より


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