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【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.236「周りが入れ込みすぎてませんか?」

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

PHOTO/Tadashi Anezaki

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来週の全英女子オープンで、今シーズンの海外の女子のメジャー競技は終了になります。それにしても、2019年の渋野さんの全英女子オープンでの優勝以来、毎年のように世界のメジャーで日本人女子選手が優勝争いに顔を出すようになりました。これはこれで、嬉しいことです。

一方で、日本人女子の先駆者的な存在だった畑岡奈紗さんのメジャーに勝ちたい気持ちは、はたから見ていても、その思い入れの強さを感じます。全米女子オープンだけでも、笹生優花さんとのプレーオフもそうやし、ペブルビーチもそうやしで、もう3度くらい惜しいチャンスを逃していますからね。そうこうするうちに、渋野さん、笹生さん、古江さん、西郷さんの4人にメジャー優勝の先を越されてしまったわけですから、心中穏やかではいられんことでしょう。


確かに日本では、オリンピックと一緒で、メジャーの試合に出る日本人の有望選手に寄せる期待感は高いものがありますし、それなりのプレッシャーを選手は感じるでしょう。でも、やってるほうからしたら、メジャーも普通の試合も同じメンツなんやから、関係ないんですよ。こんな試合どうでもええわっていう気持ちでやったら、畑岡さんなんか、逆によい結果が出るような気がします。

実際、僕はメジャーへの意気込みとかは 全然なかったし、「こんなもん調子ええやつが勝つねん」くらいしか思ってなかった。そのくらい特別扱いはしていなかったです。

でも国内のメジャーなんかでは、上位にくるとNHKで放映もされるし、これは違うなって気持ちにさせられるんも事実です。だから嫌でも意識するやろうし、入れ込んでいいんです。

それを入れ込んではいけないと思いながら、無理に気持ちを抑えようと思うほうがおかしいし、変に意識をすることで、せっかくよかった調子を崩してしまうこともあるんやろね。一番いいんは、自然でおることです。

そして、入れ込み過ぎは本人ではなくむしろ周りです。期待するあまり、今年もメジャーでの優勝がなかったかと落胆するのは、ひいきの引き倒しやないけれど、逆効果でしかありません。全英女子オープン、周りも自然体で楽しもうやないですか。

「日本の女子選手たち、素晴らしい活躍で、試合を見ておっても楽しいです」

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2025年8月5日号より