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【インタビュー】笹生優花「『なんで』が理解できるようになれば、もっと上手くなれる」

18年6月、月刊GD編集部は高校2年生の当時まだ無名だった笹生優花をフィリピンで取材していた。あれから6年半が経ち、21年と24年に2度の全米女子オープンを制した笹生。「あの頃」と「これから」を聞いた。

PHOTO/Shizuka Minami、Seiichi Nomura

笹生優花 さそう・ゆうか。2021年からUSLPGAツアーに本格参戦。同年の全米女子OPで畑岡奈紗とのプレーオフを制し、メジャー初優勝。24年にも全米女子OPを制し、男女通じて日本勢初のメジャー複数回優勝を挙げた

“理解”することが
次につながる

――フィリピンで取材してから6年半が経ちましたが、あの頃から変わったこと、続けていることを教えてください。たとえば、当時は2キロの重りを両足首に巻いて走ったり、足腰を重視して鍛えている印象でした。

笹生 トレーニング方法が変わりましたね。あの頃のトレーニングはほとんどやってなくて、今は(初動負荷トレーニングの)ワールドウィングでいろいろ学んでいます。

――イチローさんも行っていたトレーニングですね。ゴルフにどんな効果があるんですか?

笹生 ゴルフに直接効果があるというより、ケガをしない体を作ることを目的にしています。イチローさんのようなアスリートになりたいというのがこのトレーニングを取り入れたきっかけでした。

――45歳まで現役だったイチローさんのように長くゴルフを続けていきたいということ?

笹生 アスリートとしてゴルフを長く続けていきたいのはもちろん、“今”ケガをしない体作りも重要。なので“今”の自分の体をいかに管理できるかが大事だと思っています。


――技術的な変化はありますか?

笹生 スウィングは動画で見てもそんなに大きくは変わってないとは思うのですが、やっぱり体が硬くなっています。15、16歳のときとは全然違います。体は強くなっているんですけどね。

――まだ23歳、十分若いですよね。それでも子どものころのほうが体は柔らかいですか?

笹生 全然ですね(笑)。 子どものころのほうが体の動かし方も上手でした。「感覚があの頃のほうがあったのかな~」と思うことがあるくらいです。

――全米女子を2度勝っている選手でも“あの頃”の動きをちょっと欲しいみたいな部分もあったりすると。

笹生 そうですね。子どものころの柔軟性や感性があるとケガもしにくい。“ふと”あの動きが欲しいなって思うときがあるんです。だからこそそれを補うために体をしっかり作っています。体作りとスウィング作りは別物なんですけど、体を作ることでゴルフスウィングが良くなっていくと思っています。あの頃から続けていることといえば、基本練習ぐらいしかないかもしれませんね。

平均飛距離265Yを誇る飛ばし屋の笹生の10歳当時のドライバー飛距離は70Y程度だったという

――24年の全米女子オープンではロングアイアンでグリーンをとらえる技術が際立っているように見えました。ロングゲームは当時より自信がありますか?

笹生 あの頃と比べたら少しは上手にはなっているかな(笑)。でもまだまだです。ただ、あの頃ももっと上手くなれるという自信はありましたし、今も10年後にはもっと上手くなる自信もあります。それは今も昔も同じですね。

――全米女子オープンの会見で「努力は変わらない」と話していました。努力を続けていくことで笹生プロが求めているもの、ゴルフスタイルや理想のプロゴルファーとはどんなものですか?

笹生 一番は“理解して”ショットを打てるようになることです。スウィングする際にどうしても「だいたいこのぐらいかな」って感覚が入っちゃうんです。感覚は大事なんですが、その感覚を理解しないと次(のスウィング)につながらないんです。

――理解するためにはデータ(数字)から考えたりするんですか?

笹生 データもそうですが、なぜそれが起きるのか、それは体の動きなのか、自分の気持ちで反応したものなのか。ナイスショットもミスショットも「なんでそうなるのか」をちゃんと理解して説明できるようなゴルファーになりたいです。

――全米女子オープン最終日の18ホールすべてのショットをすべて覚えているという笹生プロ。1打1打をフィードバックして、そのときの感覚はどうだったかをいつも振り返っているそうですね。

笹生 たとえば、あの一打は緊張していたけどいいショットだった。逆に緊張していてミスが出た。この2つで何が違うのか。それがわかるようになったら、もっと成長できるんじゃないか、次の一打に繋がるんじゃないかと思い始めたんです。

――なるほど。笹生プロが言う「なんでそうなるのか」に関係するかもしれませんが、自宅には工房があると聞きました。笹生プロ自身でクラブ調整を行うのは、スウィングと道具の勉強をするため?

笹生 そうですね。ジャンボ(尾崎)さんに指導してもらうようになって、自分もまず道具を理解しないといけないと考えるようになりました。クラブがスウィングやショットにどう反応するのかなど、道具も一打を理解するために大事な要素と思っています。なのでこれからも道具についてももっと勉強していきたいです。

――ゴルフに関わる全てのことを理解することが今の課題ということですか?

笹生 そうですね。道具はもちろん、体やスウィングなどまだまだ全然わからないことが多いのですが、少しずつでも、体と気持ち、そして道具のことがわかるようになれば、もっと成長できると思っています。

“理解”のためにクラブ調整を自ら行う

都内の自宅にある工房。グリップ交換はもちろん、クラブの微調整は笹生自ら行っている。「私は一切触りません」(父・正和さん)

月刊ゴルフダイジェスト2025年3月号より