【“いつも80台”のセッティング術】<後編>「得意クラブ」と「ミスの傾向」をもとに構成すると上手くいく!
コンスタントに「80台」で回るためには、どんなクラブセッティングを心がけたら良いのか。引き続き、クラブフィッターの吉田智さんと、ギアにも造詣が深い峯岸正和プロに話を聞いた。
TEXT/Kosuke Suzuki PHOTO/Hiroyuki Tanaka、Hiroaki Arihara THANKS/プレミアムゴルフスタジオ
吉田智(左)よしだ・さとし。1980年生まれ。「プレミアムゴルフスタジオ」のクラブフィッターで、片山晋呉や成田美寿々などトッププロのクラブも手掛ける
峯岸正和(右)みねぎし・まさかず。1992年生まれ。「K’s Island Golf Academy」でアマチュアを指導しつつ、ツアーにも帯同する理論派コーチ
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- クラブでスコアをよくしたいなら「いいクラブ」を一本一本探すよりセッティングとして14本全体を俯瞰して考えることが重要だ。アマチュアを指導するプロの視点にフィッターの知恵をプラスして「80台が出るセッティング」を探る! TEXT/Kosuke Suzuki PHOTO/Hiroyuki Tanaka、Hiroaki Arihara THANKS/プレミアムゴルフスタジオ 吉田智……
どう攻めるかが見えると
各番手の役割も明確に
ではボギーオンを可能にするセッティングとは具体的にどんなものなのか。それを考えるためには、前述のように「自分は何が得意か」をベースにするべきだと峯岸プロ。
「まず特別飛距離が出るわけではない人の場合、自分のボギーオンの生命線がどこにあるのかが出発点です。ナイスショットの連続ではなく、そこそこの当たりが続いて2オンしない前提で考えてください。アプローチが得意で、3打目をウェッジ圏内から打てればチャンスと思えるのか。FWやUTが得意で、2打目に長い距離が残っても自信を持ってグリーン付近に運べるのか。後者の場合、FWが好きかUTが好きか。それがハッキリしたら、得意なところを最大限厚くして、その周りを固めるようにセッティングを作ることが基本です」(峯岸)
なお、飛ばし屋でないならドライバーは安定性優先。OBを減らし、曲がってもラフまでで抑えたい。飛ぶ・飛ばないの基準だけで選ばないでほしいと峯岸プロ。
自分の「軸」が決まったら、さらに細かく考えていこう。アプローチが得意な人なら、「得意ウェッジ」はあるはずだ。そのロフトやソール形状をベースに他のウェッジを選び、次にアイアンを選ぶ。
「こういう人はアイアンは『飛び系』はダメ。打感や顔もウェッジと似ていてつながりのいい、シャープなアイアンを選んでください。難しいと感じるなら、8番以下の3本でもいいんです。その上はミスなくやさしく打てるFWやUTで、ウェッジ圏内まで2打で運べる確率を上げることが肝心です」(吉田)
ウェッジが得意なら、長い距離から無理にグリーンを狙う必要はなく、大ミスさえ出なければいいのだ。このように、軸が決まればほかのクラブたちの役割も明確になる。
「FWやUTが得意な人は、得意クラブの本数をできる限りたくさん集めてください。混在させる必要はありません。アイアンは、その下のロフトを埋めればいい。それでグリーン周りまで運べたら、あとはミスなく乗せられるウェッジがあればボギーオンは約束されます。傾向としては、FWが得意な人は入射角がゆるやかなのでバウンスが少なめのアイアン、UTが得意な人は入射角が鋭角なのでバウンス多めのアイアンが合いやすいと思います」(吉田さん)
アイアンが得意と言える人は次項の「飛ぶ人」に近いセッティングになるが、ドライバーは長いものはNG。短めのものを探そう。
【Case1】 アプローチが得意
ウェッジに合わせたアイアン選びがポイント
まずは得意ウェッジの前後をなるべくたくさんのウェッジで固める。一番上のウェッジとPWの距離の階段が整うようにロフトを考えよう。アイアンは飛び系ややさしすぎるものはNG。ウェッジに近い感覚で打てるシャープなものを選び、無理に上の番手は入れない。FWやUTはウェッジ圏内まで「運ぶ」ことが目的なのでやさしさ重視
【Case2】FW・UTが得意
まずは「上から」そろえていく
FWが得意かUTが得意かを明確にし、得意なほうを重点的にそろえ、両者を混在させる必要はない。アイアンとウェッジはミスなく打てることを重視したいが、グリーン周りから確実に3打目を乗せられるやさしいウェッジが1本あると安心だ。アプローチが苦手ならチッパーでもOK。アイアンはバウンスをチェックしよう
【Case3】アイアンが得意
実は“飛ぶ人”に近い考え方
アイアンが得意な人は、グリーンに球が止められる中・上級者向けのアイアンを選びたい。コンボにして、やさしいロングアイアンを入れてもOK。入射角が鋭角なことが想定されるので、バウンス角多めのアイアンが合いやすい。ドライバーはなるべく短いものを使いたい。FWやUTはやさしくミスなく打てることを重視しよう
アイアンのバウンスを必ずチェックしよう!
アイアンのバウンス角は見落とされがちだが、実は重要なポイントで、自分の入射角に合わないとミスが多発するので要注意。入射角が鋭角な人はバウンス多め、ゆるやかな人はバウンス少なめが合うので、必ずチェックしよう
球が高い人は58度、60度は距離感が合いにくい
ウェッジは何度まで入れるか。インパクトでロフトが立つ人は多めも使えるが、ロフトが増えて当たるタイプの人はくぐるミスが出やすいので、58度や60度は避けたい。アプローチの球が高いか低いかで判断し、高い人は最大でも56度までにしておくほうが安全だ
飛ぶ人は
曲がる幅も大きい
ドライバーがトータルで250Y以上飛ぶような飛ばし屋の場合、注意点が少し変わってくるという。
「アマチュアはドライバーがスコアに与える影響が大きいですが、飛ぶ人はその傾向がさらに強くなるんです。レギュラーティーからなら、ドライバーさえ当たってしまえば2打目は長い距離は残らないので、ボギーオンはあまり苦労しません。一方で、飛ぶということはミスしたときの曲がり幅も大きくなるので、OBしたり林の奥に入れてしまってスコアを崩すケースが多いんです。だからドライバー選びがとても重要になります」(峯岸)
しかし「飛んで曲がらない」ドライバーは誰だって喉から手が出るほど欲しい。どうすればそんなドライバーに出合えるのだろうか。
「個人的には、いわゆる『地クラブ』と呼ばれるパーツメーカーをおすすめしたいです。というのも、飛ぶ人にとっては、1度未満のロフトやフェースアングル、数グラムの重量などの細かいスペックが弾道に大きく影響します。その点パーツメーカーのヘッドはコンマ1度、コンマ1g単位の個体差レベルで管理をしているので、その微妙なスペックを考慮してクラブを作れるんです。我々フィッターが腕を発揮するのもそこですし、トップアマに地クラブを使う人が多いのも、この辺に理由があります」(吉田)
パーツメーカーのクラブは量販店では扱っておらず、クラブ工房などでオーダーメイドすることが基本となり、価格面も含めハードルが高い。しかし飛ぶ人ほど恩恵は大きいので、信頼できる工房を見つけられれば、メリットは大きいと言える。
【Case4】飛ばし屋
飛んで曲がらないドライバーを探す
ドライバーに徹底的にこだわることで、飛ぶことのデメリットを減らしメリットを享受できる。アイアンは飛び系はNG。ヘッドスピードの速い人はバウンスの影響も大きいので、アイアンのバウンス選びはより重要になる
モデル選びに関しては、「ミスをベースに選ぶことが大事」だと峯岸プロは言う。右に行くミスが多いのか、左に行くミスが多いのか。それは打ち出し方向はどっちで、曲がりはどうなのか。これらを把握するのは、自分に合ったクラブを探すうえでとても重要だという。
「このとき自分のクラブパス(スウィング軌道)の傾向が1つの基準になります。これは思い込みで勘違いしている人も多いので、一度弾道計測器などを使って客観的にチェックしてください。また、グリップの握りによってもクラブの動きが変わってきます。フックグリップは基本的にフェース開閉量が小さく、ウィークグリップは大きい。下にこれらを考慮したフローチャートを作りましたので、参考にしてください」(峯岸)
注意点は、主に重心距離とフェースアングル。加えてフェースプログレッション(FP)だ。「重心距離はフェースの返りやすさに影響しますし、フェースアングルやFPも球のつかまりを左右する重要な機能。『左向きの顔はイヤ』などと先入観にとらわれずに選べば、必ず結果はよくなります」(吉田)
モデル選びのPoint
ミスをベースにクラブを選ぼう
月刊ゴルフダイジェスト2025年2月号より