「ゴルフで王貞治会長に言われたことが最近ようやく分かるように…」松田宣浩が女子プロ2人と激熱トーク<後編>
女子プロゴルファー福田真未と三ヶ島かなと、元プロ野球選手の“熱男”こと松田宣浩による異色対談。ここでは、セカンドキャリアのこと、ゴルフの魅力など、後編も熱く語ってくれた!
PHOTO/Shinji Osawa、Getty Images
福田真未(左) ふくだまみ・1992年福岡県生まれ。11歳でゴルフを始め、沖学園高卒業後、11年プロテスト合格。17年の伊藤園レディスでツアー初優勝後、18年の北海道meijiカップで2勝目。安定したプレーぶりで13年から10年間シードを取り続けている。「地元の福岡ソフトバンクホークスのファンです」
三ヶ島かな(中) みかしまかな・1996年福岡県生まれ。10歳でゴルフを始め、沖学園高卒業後、16年プロ入り、18年プロテスト合格。21年メジャーのリコーカップで初優勝。16年からの6年連続シードを昨年逃がし復活を目指す。「三浦(大輔)監督の自主トレに参加したご縁で横浜DeNAベイスターズのファンです」
松田宣浩(右) まつだのぶひろ・1983年滋賀県生まれ。中京高、亜細亜大を経て06年福岡ソフトバンクホークス入り。走攻守すべてアグレッシブに、またムードメーカーとしてチームを引っ張る。22年に読売ジャイアンツ入団、23年に現役引退。現在は解説者およびCS番組『熱男ゴルフ』のMCも務める。ベストスコアは94
>>前編はこちら
- 福岡在住の中堅女子プロ、福田真未と三ヶ島かなが訪ねたのは、元プロ野球選手の“熱男”こと松田宣浩。果たして3人はどんなトークを繰り広げる? PHOTO/Shinji Osawa、Getty Images 三ヶ島かな(左) みかしまかな。1996年福岡県生まれ。10歳でゴルフを始め、沖学園高卒業後、16年プロ入り、18年プロテスト合格。21年メジャーのリコーカップで初優勝……
「諦めないことが一番大事だと思います」
――野球とゴルフの動きなどに共通点はありますか?
松田 僕がゴルフを始めたのはプロ野球に入ってから。今のスコアはどこでもほぼ100点満点(=100打)です。どちらもボールを道具で打つから一緒だと思われがちなんですけど、野球は前から来るボールを道具で打つ。ゴルフは止まっているボールを道具で打つ。野球はちょっと詰まってもヒットゾーンに飛べばオーライ。結構アバウトな感じでできるのが野球なんです。そういう意味ではゴルフのほうが上。止まっているものを打つって、技術的にアバウトにはできないなと思います。
福田 でも、止まっている球は同じタイミングで打てますけど、向こうから来る球は動きを読まないといけないですよね。難しそうです。
松田 相手から来るから、見えたボールにバットを出すだけです。
福田 ええっ、あの瞬間が見えるということですか。
松田 見えますよ。逆に止まっているボールのほうが、どこに当てたらいいのかと。ところで女子プロって運動があまりできなくてもいけるんですか? やっぱりアスリートなのでランニングしたり鍛えている人はたくさんいますよね。
三ヶ島 いけちゃうかもしれないけど、最近飛ばし屋有利で距離が必要になってきたので、そういう意味ではトレーニングは必要。私はプロ2年目頃からやっています。
福田 昔はランニングだけだったよね。最近の若い子はやってます。
松田 トレーニングも最近は科学的になった。野球でも僕が入った18年前よりバットの材質やグローブの機能は上がってきました。それに2、3時間ノックを受ければとにかく根性も技術もつくという教えだった。今はいかに効率よくするか。30分でいいから集中して、少し体力に余力を残して練習を終えるというのが主流です。
福田 そうかもしれない。私たちも打ったら上手くなると思っていたので、1000球とかひたすら打っていました。
三ヶ島 とりあえず暗くなるまで練習場にいたりして。
松田 以前は2、3時間ノックを受けてバッティング練習するから結果は出るやろう、出なかったら仕方ないという感じで。今は監督もコーチも、準備する時間を本人に与えて余力を残してあげるからしっかり個人で結果を残しなさい、という時代なんですよ。だから、ある程度プレッシャーは感じるとも聞きます。自己責任が大きくなる。ところで、お二人は多くのお客さんのなかで緊張しますか?
三ヶ島 するときとしないときがあります。のめり込んでいるときは何も周りは見えません。
福田 予選カットラインのときが一番緊張するかも。優勝争いとは違うドキドキです。
三ヶ島 そうですね、落ちたら赤字になると考えたら(笑)。
松田 ゴルフの内容がよくても落ちたら何もできないもんね。
福田 予選を通って残り2日あれば一気にジャンプアップできるので。でも、予選落ちしないゴルフをしていると優勝争いに行けないので、そこが難しいですよね。
松田 野球選手は4打席あったら、1打席から3打席が三振でも、最後にサヨナラホームランを打ったらヒーローなんですよ。だから諦められないですね。
2人 なるほど。
松田 ずっと三振だとチームには迷惑かけるけど、最後に回ってきた打席でサヨナラを打ったら僕の勝ち。でも4打席4ホーマー打っても負けたときはヒーローにはなれない。1年間で143試合やるなかで数字を出すスポーツなので、昨日4打席4三振でも、次の日4打数4安打というチャンスがあるから、諦めないことが一番大事だと思います。でもそれに気付いてない人、諦める人はたくさんいる。挽回できる試合があるんだから、次に何ができるのかと考える選手は年々減ってきています。
「まだまだ伸びしろはあります
海外にも行きたい」
三ヶ島 最近、海外に行く選手が増えました。松田さんは? 私は全米女子オープン出てめちゃ楽しくて、向こうに行きたいなと思ったんです。持病があるのでスポット参戦でも。練習環境とか雰囲気とか自由さとか最高でした。
松田 僕もメジャーには行きたかった。高みを目指しているならチャレンジしてほしいと思います。ダメだったら帰ってきたらええんです。僕はダメだったら……と考えて残った部分がある。でも考えてみれば7割失敗しても3割成功すればいいのがバッターなんですから。
――改めて、ゴルフの面白さはどこにありますか?
松田 18ホールのなかにパー3、4、5があるのが醍醐味。あとは、野球はできる人が限られるけど、ゴルフって、スポーツのなかで一番男性も女性も皆チャレンジできると思うんです。それがうらやましいし、すばらしいです。
福田 私も同じで、年齢問わずいろんな方とできますし、ミスしてもリカバリーできることが本当に楽しいなと思いますね。ミスには私も落ち込むんですけど、次に挽回するために組み立てていける。でもゴルフ、飽きますよ(笑)。
松田 僕たちはようやく自由にゴルフできるから本当に飽きない。一番“熱い”のは上がり3ホール。そこが上手くいけば95で終わる、というときにミスするけど(笑)。
Sansan KBCオーガスタの金曜日にゴルゴ松本氏とラウンドレポーターを務めるという松田氏。解説に興味があるという2人に、「最新のホットな情報を入れたり、少しインパクトを強く、自分らしさを出していくほうがいい。皆と同じではないほうがいい。僕は困ったら『熱男!』と言っているし、それが人と違うところです」
福田 野球が嫌になったことありますか?
松田 ないです。実は双子のお兄ちゃんがいるんです。小中高と野球をして、兄には生まれ持ったセンスがあって全部勝てなかったので僕は努力しないといけなかった。それで小学校のときはとにかくバットを振ったし、そこから野球が嫌いになることはなく、野球することが当たり前な感覚でした。
三ヶ島 ゴルフって深いんです。だから毎日何かの新しい発見があるんですよ。それを見つけた瞬間が一番楽しい。でもやっぱり飽きるからあえて月曜日はゴルフしません。1週間で1日しない日を作ると、またゴルフしたいとなる。プロ2年目くらいからメリハリを作ったら結果もよくなりました。
日々ゴルフの難しさと楽しさを感じる2人。「1回の失敗でダメではない。ミスをリカバリーできるのも面白さです」(福田)「全米女子オープンに出られたり、いろいろな経験ができるのもいいなあって最近思えます」(三ヶ島)
三ヶ島 松田さん、シーズン中に気を付けていたことはありますか?
松田 僕も同じように、月曜日はまったく何もしなかった。日曜日は必ずデーゲームで試合が終わって、唯一いっぱいお酒を飲める日。だからリフレッシュして、明日のことは考えずに、また火曜日から臨む。月曜日を大事にしていました。あの……僕もお二人に練習法なんかも聞きたくて。元気がありすぎてゴルフの打ちっ放し1時間で300球打つんですけど、それってどうしたらいいですかね?
福田 どんなスピードで打ってるんですか(笑)。素振りやルーティンもしています?
松田 します。全番手打ちます。もう少し丁寧にやるべき? 僕みたいなゴルフ好きのおっちゃんにアドバイスをお願いします。
福田 最初からドライバーでガンガン打つことはやめたほうがいい。
三ヶ島 ケガしちゃいますしね。
福田 練習場って同じ方向にしか向いてないので、わざと狙う場所を変えたり、向きを変える練習をしたほうがいいですね。
三ヶ島 コースに出るといろいろな状況があるので。
松田 なるほどね。練習場には毎日行けないから、元を取らないといかんと思ってしまう。よし、今日から直そう。30分100球でいいですね。
2人 それでもハイペースです!
色々なことにチャレンジしたい!
――皆さんの今後の目標を教えてください。
松田 今は野球解説者としてしっかり勉強したいと思いますし、選手としての野球はお腹いっぱいできたので、もっとゴルフに向き合いたい。野球選手は12月、1月のゴルフしか知らないので、夏にポロシャツと短パンでできるのがうれしい。芝の色も全然違うと最近わかりました。月に2、3回しかできないですがいろいろな発見があります。王(貞治)会長に若い頃に言われたことがやっとわかり始めて。止まったボールを、自分であそこに置いて、あそこに置いて……そして入れなさいと。そうして自分で計算したところに打つのがゴルフだと。自分が飛ばしたい場所に飛ばせるようになりたい、それが今後の目標です。
三ヶ島 私は今年はまずシードを取りたいですね。それでゴルフは一生続けたいと思います。
福田 私は3勝目を挙げたいということと、レッスンや解説の仕事も興味があるので、いろいろなことに挑戦したいんです。
松田 もう1つ、僕、指導者は興味ないけど、小中学生などアマチュアのプレーヤーに教えることはすごく興味があります。教えるというよりも一緒にプレーをする感じがいい。ピッチャーをしたり、一緒にグラウンドに行って触れ合う時間を大切にしたり。上の子が中学校で硬式野球をしていて、そのコーチもしているので、時間があるときは整備もしますしストップウォッチも持ちます。バッティングの形がこうなっていると指導するより、同じ時間を元プロ野球選手やった人と過ごしてもらうだけでもいいかなと思います。
福田 私もジュニアには教えたいんです。始めたばかりのお子さんでも大歓迎で。
三ヶ島 私も教えたりすることは考えないといけないし、今後、何をしていくかも探さないといけないですよね。
松田 まだ大丈夫ですよ。海外を目指して、優勝もして。ゴルフ一本でいいんです。僕がセカンドキャリアを考え始めたのは35歳過ぎてから。自慢じゃないですけど、まだ誰にも負けてないと思っていてやめることも考えずにやっていた。まだ28歳。ゴルフのことだけ考えていいんですよ。オヤッというタイミングがくるし、自分から頑張って考える必要はない。
2人 なるほど。タイミングですよね。今日は、楽しくタメになる話をありがとうございました!
松田 今度はラウンドしながら、僕にゴルフを教えてくださいね。
週刊ゴルフダイジェスト2024年8月20・27日合併号より