【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.824「短パンOKでもだらしない着こなしはOBですよ!」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
先日、JGTOがトーナメントで熱中症防止のため、選手の短パン着用を認めると発表しました。本戦でのドレスコード改正ですが、岡本さんはどう思いますか?(匿名希望・58歳・HC5)
7月中旬を過ぎてもいまだに梅雨明けしていないのに、熱波に見舞われ、広島も畑に出る早朝から気温は上昇、連日の猛暑に汗は止まらずです。
こんななか、4日間のラウンドを戦う選手たちはじめ関係者のみなさん、くれぐれも熱中症のほか、体調不良に陥らないよう気を付けてもらいたいものです。
実際、日差しを遮るもののないコース上では、体感温度は気温を大きく上回って危険な状態になりがちです。
のどの渇きを感じなくても、こまめな水分補給を心がける必要があります。
ここ数年の夏の暑さは以前より深刻化し、頻発する豪雨による水害も地球温暖化の影響なのでしょうか。
気象条件が時代と共に変化するならば、それに応じて規則や対応が改正されるのも当然かもしれません。
日本ゴルフツアー機構(JGTO)の今回の方針は、「8月限定、まずはトライアルという形で」実施されるものとしていますが、出場選手にとっては少しでも暑さ対策の選択肢が広がるのでうれしいと思います。
これまでにもこのような声は上がっていたようです。
8月下旬に開催されるKBCオーガスタでは、2021年の大会から、練習日とプロアマ大会での選手の短パン着用が認められるようになっているそうです。
ちなみに、短パンにすることで体感温度は4度違うというデータもあるそうです。
これまで本戦での短パン着用は認められていなかったですが、今回、8月8~11日に開催される横浜ミナトチャンピオンシップに出場する選手たちは、本戦まで短パンのプレーができることになったそうです。
JGTOとしても熱中症対策の一環として検討を重ねてきた結果であることを強調していますが、ポロシャツはパンツの外へ出さず、中へ入れる条件を示しているそうです。
ただ今回は、あくまで熱中症対策の一環として、特例での容認とされています。
つまり一般的なドレスコードの改正ではないということです。
半ズボンでプレーしてもいいと判断したことは、気象や気温など自然条件の厳しさに対応して大会の開催時期やトーナメント規則などを調整することと同じであって、プレーヤーが試合でどんなウェアを着用すべきかという問題とは別ものだということです。
今回の短パンOKは、単なるウェアの規定とは違う措置なのだということです。
もちろん、今はどんな伝統的なゴルフ倶楽部であれ、プレーヤーにニッカーボッカーにネクタイ着用を強いるコースはありません。
それは、社会構造の変化とともに装いの常識が変わってきたからです。
ゴルフ場が求めるドレスコードは、コース脇のやぶや草むらに侵入するケースを想定した危険防止の服装を規定するだけでなく、ゴルフというスポーツが人間社会でどのような地位を保ち、どのように受け入れられているか、そうした社会的なコンセンサスに基づいて定められてきたと言ってもいいでしょう。
ゴルフとはこういうもの、ゴルファーとはこうでなくてはならない、そんな固定観念で規範的ファッションが決められていた時代も長かった。
それもゴルフ全般のスタイル同様、時代とともにカジュアル化の道をたどってきました。
そして今、地球全体が夏の猛暑に悲鳴を上げている。
そこで伝統的ゴルフファッションを貫くと主張するより柔軟な考えがあっていいと思いますし、わたしはもう少し早く短パンOKの改正があっても良かったんじゃないか、と思います。
ゴルフ界がもっとも大切にしているのは、マナー&エチケットだと思います。
短パンOKだからといって、だらしない着こなしをして周囲に不快感をふりまくことは、くれぐれもやめてくださいね!
「”ティー・ピー・オー”が大事なのですよ」(PHOTO by Ayako Okamoto)
週刊ゴルフダイジェスト2024年8月6日号より