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【インタビュー】竹田麗央<後編>「ドライバーで飛距離を稼いでセカンドを短い番手で打つのが私のスタイル」

今季初優勝から前半戦ですでに3勝を挙げ大ブレークの竹田麗央にインタビュー。後編では、その圧倒的な飛距離を育んだ土台と、海外メジャーを経験して得た今後の課題について語ってくれた。

PHOTO/Shinji Osawa、Tadashi Anezaki THANKS/くまもと中央CC

>>前編はこちら

  • プロ入り3年目にして今年大ブレーク中の竹田麗央。日本ツアー16試合に出場しトップ10入り10回(トップ5入り9回!)、うち優勝は3回だ(※)。冷静にして大胆。柔にして剛。ツアー後半戦を前に、21歳の強さとゴルフに迫った。 PHOTO/Shinji Osawa、Tadashi Anezaki THANKS/くまもと中央CC ※数字は7月18日現在 竹田麗央 たけだりお。2……

ドライビングディスタンス
1位になりたい

「りお」という名前の由来は、世界で活躍してほしいという両親の願いが込められているのか。

「うちのショップにたまたま来られたお客さんが、ブラジルのリオのカーニバルがすごかったと話をしたそうです。私の名前を提出する期限が迫っていたらしくて、両親が『じゃあ、リオにするか』と。そのお客さんはそのときだけ来られた方です。漢字は両親が決めたみたいですけど(笑)」。その一見の“名付け親”は、竹田の将来を見越していたのかもしれない。

竹田の母は女子プロの平瀬哲子、叔母は93、94年の賞金女王・平瀬真由美だ。家業はゴルフショップ。3、4歳の頃から店の打席で遊びながらゴルフを始めたのは自然の流れだろう。6歳頃には練習場に行くようにもなった。

「あまり覚えてないんですけど、母と行って楽しかった。初ラウンドは小学校入学の前後。ハーフで60くらい打ちましたよ、ふふふ」

竹田は「ふふふ」とホンワカと笑う。いわゆる“癒し系”。しかし、根はアスリートだ。父、宜史さんも競技ゴルファーだった。

「父は大学生まで野球をやっていたんです。法政大学野球部のサードで5番だったとか」

兄は日体大(卒業)、弟は東海大熊本(現役)の野球選手だ。

アスリート一家!「スウィングは母、道具は父のアドバイスで」

今も5人でラウンドする仲良し親子。「小さい頃は兄、弟と殴り合いをして負けてなかった(笑)。母がツアーに帯同して洗濯などしてくれるので心強いです」


ゴルフと野球が自然に身近にある環境――ここで竹田はのびのび育つ。水泳やヒップホップも習いながら、小6ですでにプロゴルファーになろうと思ったという。

「ちょうどイ・ボミさんが活躍されていて。強くてかわいくてすごい人気で、私もなりたいなと」

練習環境のよい熊本国府高校に進学。高3のとき迷わずプロテストを受験した。

さて、竹田に最もこだわるスタッツを聞くと、すぐに「ドライビングディスタンスです」との返答。

「1位になりたいんです。ふふふ」

そこは譲れないらしい。

「私はドライバーが得意。フェアウェイキープ率はそんなによくないですけど方向性重視とかはあまり考えない。ドライバーで飛距離を稼いで、ラフに入ってもセカンドは短い番手で打つ。それが自分のスタイルですから」

アマチュアに飛ばしの秘訣を聞かれたら?

「なんだろう。まずは芯に当てることを大事にしています。芯に当てる感覚を身に付ける。けっこうやわらかめの手ごたえですね」

今も必ず行う練習がある。ティーアップしたボールを58度のウェッジでゆっくり振って打つ。

「最初の5球はフルスウィングでかなりゆっくりめに振って20ヤードくらい飛ばす。かなり難しいですよ。これが上手くいくことが自分の“基準”です」

「練習は効率よく、スウィングは思い切り!」

ドライビングディスタンスは昨年2位(258.91Y)、現在4位(262.48Y)。「練習は昔から短時間で集中してやるタイプ。高校で150球、今は50球くらいです。多く打っても変わらないし、疲れます」

竹田は自分のゴルフの“もと”は母にあるという。遠くに住んでいた叔母に教えてもらった記憶はない。母とは喧嘩もしたが今、口うるさく言われることはない。

「でも、基本の指摘はしてくれて、アドレスをよく言われます。あまり当たっていないときは、スウィングのことばかり考えるんですけど、アドレスがズレていることが多い。左を向きすぎることがあって、自分では気付かないんです」

父にはクラブの相談をする。

「よくクラブのことを知っているので、替えるときには聞きますね」

また、竹田の趣味でもあるキャッチボールも、ゴルフに通じるものがあるという。今も仲のよい小祝さくらなど女子プロたちと楽しんだり、兄・弟からは投げ方を教わったりもする。

ピッチングフォームもスウィング同様大きくて、様になっている。「たぶんゴルフに生きていると思います。ひじの位置や、腕を振ること、最後まで振り切ることなんかはゴルフに通じますね」

竹田はこうして自分でスウィングを作ってきた。参考にする動画は海外ツアーの男子選手だ。

「ダスティン・ジョンソンはフェードヒッターで飛ぶ。ダウンでの手首の折り方(掌屈)が自分のイメージと合うんです。(ローリー・)マキロイは、フォロースルー側と“振り切る”フィニッシュをよく見ていました」

母もいて、今、コーチを付ける必要は感じていない。

「私、基本全部自分で決めるタイプなので。キャディも1人に決めずに5人くらいの方にお願いします。気分転換にもなりますしね」

客観性と主体性。ここにもまた竹田の強さの秘密があるのかもしれない。

阿蘇山よりきれいな景色を世界で!

今年は、海外のメジャーにも出場する機会を得た。これが竹田の海外挑戦熱を上げてくれた。

「全米女子オープンが思ったより楽しくて(笑)。日本になかなかないコースで。グリーンの傾斜がけっこう強いけどフェアウェイは広くて、自分のゴルフに合っているなと思ったんです」

この試合、笹生優花が優勝し、渋野日向子が2位。しかし竹田も9位タイに入っている。

笹生が3Wで1オンしバーディを取った最終日の16番パー4で竹田はイーグルを奪取している。

「ドライバーショットで自分のイメージした球が打てて1オン。ロングパットも入って完璧でした。歓声もすごかったので、なんだかすごいなと思いました。ふふふ」

メジャーという大舞台、楽しいコースで会心のプレーができた。

「アメリカツアーには行きたいと思ってはいたんですけど、そんなに早く! ということではなくて、今年何試合か行ってみて決めようと思っていたので、自信になりましたね。それで全米女子プロにも出場を決めたんです。こちらのコースは、狭くてセパレートされていて、フェードとドロー、両方求められるコースでした。すごくいい経験になりました」

アメリカのギャラリーも印象的だった。「けっこうドライ。お酒を飲んだり楽しんで、あまりプレーを見ていない適当な感じもあって、それもいいなと(笑)。でも声援や拍手もいただけますし」

一緒に回った女子プロからも刺激を受けた。「英語も一応少ししゃべりました。『TOTOジャパンには来るんですか?』なんて。一応通じました(笑)」

全米女子プロ選手権は32位、3試合目のアムンディエビアン選手権は55位だった。

「エビアンは景色がすごくきれいだと聞いていたので出たかったんです。でもコースは難しかった。もっとたくさん経験を積まないと。技術の引き出しも足りないです」

そして、8月の全英女子オープンでも予選通過を目指し、また自分のゴルフの糧にするつもりだ。

「今年はセントアンドリュースなので行きたいと思っていたんです。風も強いでしょうし、低い球を練習して対応したいです」

「海外でも自分らしく攻める。飛距離は勝てる気がします」

海外メジャーで3カ国のコースと4つの大会を経験。「全米女子ではダニエル・カンと回り、全米プロでは19歳のアレクサ・パノと。彼女は大きくてパワフルですごく飛ぶ。でも飛距離は負けてないと思いました」

きれいな景色を見ることがリラックス法だという竹田。目下の一番は、地元の「阿蘇山」だ。

「南阿蘇です。トンネルを抜けて左側に見える山があるんですけど、そこが好きです。ふふふ」

これから世界に羽ばたく21歳の目に、阿蘇山より美しい世界の景色がいくつも映るのだろう。

今後の目標は?

「まずは4勝目と日本のメジャーが3試合残っているので優勝したい。そして、いつになるかはわからないけど、アメリカツアーに挑戦したいです」

今年の米女子のQスクール受験は考えていない。今はまず、日本ツアーでしっかりと戦うつもりだ。ファンの皆さんに見てほしいのは、やはり「ドライバーショットです」。ここは力強く言う竹田。

「熊本にはアツい人が多いんです。練習場でも、初優勝する前はおじさんたちに『早く勝たんね』と言われていて。勝ったら『早く2勝目!』なんてけっこう厳しい。でも応援してくれています。3勝したら『すごいね』って(笑)」

熊本から世界へ――。勝利を重ねるたび、どんな賞賛の言葉が飛び出すか楽しみだ。

「まずは4勝目&メジャー優勝。いつかはアメリカへ」

優勝してもガッツポーズをあまりしない竹田の“予行練習”。「自然には出ないんですけど、次に勝ったらしようと思います。でも一緒に回っている人もいるので、小さく、でもいいですよね」

週刊ゴルフダイジェスト2024年8月6日号より