【江連忠のPROJECT E】Vol.250 涂阿玉「ムチのように全身をしならせて飛ばしていた」
片山晋呉や上田桃子など、数多くのトッププロを世に送り出してきた江連忠が、自身の経験をもとに、レジェンドのスウィングに宿った“本質”を語る!
TEXT/Yumiko Shigetomi PHOTO/Hiroyuki Okazawa、Blue Sky Photos、GD写真部 THANKS/オーシャンリンクス宮古島
●今月のレジェンド●
涂 阿玉
ト・アギョク。1954年生まれ、台湾出身。日本ツアー58勝(入会前11勝)。賞金女王7回。勝負の日にピンクのウェアを着用することから“ピンクパンサー”の愛称で親しまれた。168センチ
下半身を使うからこそ
全身をしならせられる
樋口久子さんや岡本綾子さんのライバルであり、スウィングの迫力やオーラが群を抜いていた涂阿玉さん。
女性ながらに鋭いパンチショットの名手でもありました。
細身ですが長い手足を存分に生かして全身をムチのようしならせていたので、当時の重いクラブでも速く振れて相当な飛距離を出していました。
この全身がしなるということを可能にしているのが切り返しの下半身リード。
手の位置はほぼ変わってないのに、左ひざが大きく動いているのがわかると思います。
この切り返しから腕とクラブは重力で下りて、下半身は左に移動しても頭は右に残っているためヘッドにかかる遠心力が大きくなるのです。
タメの深さによる角速度、重力、遠心力を最大限に使っているため、力感はないのに飛ばせています。
現代の選手では見られないフットワークの大きさですが、脚を使うからこそ腕に力感が生まれない。
ここは参考にすべき部分です。
頭が残っていれば左ひざは大きく動いていい
切り返しで大きく左にひざが動く下半身リードは飛ばしにつながる動き。逆に下半身が動かず上半身から動き出すと、パワーが逃げるだけでなくクラブ軌道も悪くなる
涂阿玉の系譜を継ぐのはこの選手
ネリー・コルダ
長い腕を力まず重力で下ろしている
涂阿玉のスウィングの形を現代版に整えたような印象。長い腕を腕力ではなく重力で下ろすから深いタメが生まれてヘッドが走るし、再現性が高くなる。今も昔も強い選手の共通点といえる
江連忠
1968年生まれ。東京都出身。高校を卒業して渡米し、ミニツアーを転戦しながらジム・マクリーンに師事したのち帰国。日本のプロコーチ第一人者となり、片山晋呉や上田桃子を賞金王に育て上げた
月刊ゴルフダイジェスト2024年8月号より