【名手の名言】棚網良平「間のないゴルフは“間抜け”というんだ」
レジェンドと呼ばれるゴルフの名手たちは、その言葉にも重みがある。ゴルフに限らず、仕事や人生におけるヒントが詰まった「名手の名言」。今回は名コーチ・江連忠の先生でもある棚網良平の言葉を2つご紹介!
ゴルフで“間”は非常に大事
間のないゴルフは
“間抜け”というんだ
棚網良平
“間”という言葉は日常生活でも、頻繁に使われる。間の悪いときに……、などと言ったりする。
芸能の世界でも、間の話はよく聞かれる。落語、歌舞伎、舞踊など、極論を言えば絶妙の間を獲得することで、至芸に高めることができるといえる。
ゴルフスウィングにおける“間”も、また同じではないだろうか? 古今東西の名手・達人のそれは、見事な間によって成立している。
テークバックの間、トップ・オブ・スウィングからの切り返しの間。そしてスウィング全体の間。言葉では表現しようのないバランスの良さがそこにはある。
棚網の時代、ゴルフスウィングには、タイミングとかリズムとかテンポとかの概念がなかった。それらを総合して、バランスよい動きを「間があるスウィング」と棚網は表現したのだろう。
棚網は、名コーチ江連忠の先生でもある。江連は言う。
「棚網先生は悪魔の魔ぐらい、間は難しいと言っていました。間のタイミングとかリズムというのは目に見えない。しかしその目に見えないものをコントロールすることが一流ではないかと、教えてくれたのです」
棚網自身の、とくにアプローチ、パットの間のとりかたは絶妙であったという。
ゴルフは空中戦ではなく
地上戦なんだ
棚網良平
表題の言葉は、アプローチの要諦を解いている。
上げるより、転がし。つまり、アプローチの基本はピッチショットよりランニングにあると棚網は言う。
この思考はゴルフの本場、スコットランドのリンクスから発せられている。風が強く、アプローチだけでなく、ショットでさえ風の影響を受けない低い球筋が有効。いわば地上戦なのだ。
棚網は小技の名手で知られ、そのゴルフ理論は名コーチの江連忠、内藤雄士らに引き継がれた。
■ 棚網良平(1921~2012)
たなあみ・りょうへい。東京都生まれ。11歳からゴルフを始め、戦前は東京GC、戦後は相模CCと名門コースの所属プロとして活躍した。現在でも相模CCでは名誉プロ。戦績は50年の関東プロ、60年の日本プロで優勝し、特に大洗GCで行われた日本プロは、土壇場での大逆転で今でも語り草になっている。87年には関東プログランドシニアを制し、息の長さを誇った。正確なショットと、アプローチ、パットの小技の無比なことで、玄人に定評があった。91歳で逝去。