【陳さんとまわろう!】Vol.247 腰のキレとリストターン。ドローを打つための肝です
ベン・ホーガンのスウィングを目に焼き付けて、陳さんは自身の体の動きを磨いていったという
TEXT/Ken Tsukada ILLUST/Takashi Matsumoto PHOTO/Tadashi Anezaki THANKS/河口湖CC、久我山ゴルフ
フックからスクエアに。
グリップを変えて
球筋が安定していった
――前回、陳さんはアドレスでクラブを構えたときに、ベン・ホーガンと同じハンドアップにしていると説明してくれました。
陳さん はい。ホーガンを初めて見て思ったのは、きれいなアドレスだなということなんだねえ。後方から見ると手の位置が高いんだ。それまで見てきた日本のプロは手を下げたハンドダウンが多かったのよ。というのもフックグリップだったから。フックグリップでは手の位置を上げて立とうとしても立てないよ。
――陳さんもホーガンを見るまではハンドダウンだったんですか。
陳さん そうでもありませんでしたけど、ハンドアップじゃなかった。川奈でフックグリップをスクエアグリップに変えてから、球筋がだいぶ安定するようになったおかげでワールドカップに台湾代表で出られるようになりましたけど、まだまだ本物じゃなくてね。そのために突然フックボールが出てスコアを落とすことがあったわけ。それがウェントワースの会場でホーガンを見て、グリップや構え方が自分とだいぶ違うことを知って、目からうろこが落ちたというかな。本物はこうなんだと。そこから、ホーガンの構え方をしっかり目に焼き付けて、台湾に帰ってからずいぶん練習したよ。2年後のメキシコ大会でもホーガンを見つけてスウィングチェックをやって。自分のグリップ、構え方に修正を加えていってね。
――それまで未完成だったスクエアグリップをよりスクエアグリップらしく、また手の位置も上に上げてハンドアップにしたわけですね。
陳さん そう。すると球筋が安定してきたんだねえ。スクエアグリップにしてハンドアップで構えてスウィングすると、リストターンがやりやすくなるの。ハンドアップにすれば左腕から左の親指までが一直線になるでしょ。1本の棒みたいに。だから回転しやすいじゃない。しかしハンドダウンで構えると手首のところが折れて角度ができるからね、1本の棒というわけにいかない。だからリストターンしにくいの。リストターンはスクエアグリップでドローボールを打つための肝になるところよ。だからハンドアップは絶対に必要な構えなんだねえ。
――リストターンによってクラブフェースをインパクトゾーンで右向きから左向きに変え、ボールに左回転をかけてドローを、ですね。
陳さん インパクトでクラブフェースがボールに当たったときはまだフェースは右を向いているわけ。目標に真っすぐ向いているわけじゃないんだ。で、ボールがつぶれている間にフェースを左に向きを変えるわけよ。ボールが離れて飛び出すときにはフェースがしっかり左を向いていることが必要ですから、この動きは素早くやらなくちゃいけない。
――一瞬の間に、ですね。
陳さん ここで腰のキレが大事になるわけ。キレというのは回転。フェースがボールをとらえた瞬間に腰を左に回転させるんだ。ダウンスウィングで右から左へ直線的にスライドしてきた腰を回転に変えるのよ。このときの腰は右腰なんだね。左腰を意識して回すと腰が引けるから気を付けなくちゃいけない。腰のキレと、リストターンは同調させることが大事でね。キレが早いとボールをこするし、リストターンが早いとボールを引っかける。だから同調させるための練習が必要よ。
陳清波
ちん・せいは。1931年生まれ。台湾出身。マスターズ6回連続出場など60年代に世界で日本で大活躍。「陳清波のモダンゴルフ」で多くのファンを生み出し、日本のゴルフ界をリードしてきた
月刊ゴルフダイジェスト2024年4月号より