「ドライバーは“運ぶクラブ”」「UTの距離はサイドスピンで調整」青木瀬令奈“飛ばない私”の戦い方
平均飛距離が224ヤードながら、昨年2勝を挙げた青木瀬令奈が、飛ばなくても強いゴルフの秘訣を伝授。後編では、青木の武器である正確無比なウッドの打ち方を教えてもらった。
TEXT/Shotanow PHOTO/Arakishin THANKS/紫CCあやめC
サポート解説/大西翔太
おおにししょうた。名門・水城高校ゴルフ部出身。その後コーチング理論を学び、2015年から青木のコーチ兼キャディとしてツアーに帯同。技術論にとどまらずギアやコース設計にも造詣が深い
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- 平均250ヤードを超える選手も少なくない近年の女子ツアーにあって、昨年、平均224ヤードという飛距離で2勝を挙げた青木瀬令奈。「ゴルフを始めた頃からずーっと飛ばない」という彼女を支える14本のセッティングと、それを使いこなすテクニックについて聞いてみた。 TEXT/Shotanow PHOTO/Arakishin THANKS/紫CCあやめC 青木瀬令奈 あおきせれな。199……
番手間の距離は
サイドスピンで調整
――UTを3本入れていますが求めるものは?
青木 私はロフト23度の5UTでキャリーが163ヤードですが、この距離はピンに絡む精度が欲しい。つまり、グリーンで狙い通りに止める必要があります。
――アイアンでは難しいのでしょうか?
青木 身長が153センチと高くないので、上からつぶしてバックスピンで球を上げるような打ち方が向いてないんです。UTだと払うように打ってもヘッドがボールを上げてくれます。また、縦の精度も欲しいので、番手間の距離は大きめのクラブを持ち、サイドスピンの量で距離を落としたフェードを打って、距離の隙間を埋めています。
ピン位置が手前のときや、バンカーを越えてすぐの場所に切られている場合、ランの少ないショットが要求される。青木のヘッドスピードでは打ち込む必要のあるアイアンより、払い打って高さの出せるUTのほうが高さで止めやすい
UTでは高さを出すために、ややカットめにヘッドを入れてフェードで攻めることが多いという青木
高い球を打つ方法1
ギア効果を使いスライス回転をかける
フェースのヒール寄りに当てることで、ギア効果によってスライス回転がかかりやすくなる。青木はこれを利用して、高くグリーンに止まりやすい球を打っている
高い球を打つ方法2
カット軌道になるアドレスを作る
フェースは目標に向けるが、スタンスと肩の方向を目標より左に向けたアドレスを作る。そのままスタンスなりに振ることで、自然とスライス回転がかかり、球が上がりやすくなる
大西翔太のワンポイントレッスン
トップで胸を後方に向ける
カットに振ろうとするときに、手元の動きだけでトップを高くしようとすると、打点が安定しない。バックスウィングで胸を後方に向けるようにするだけで、十分な捻転ができ、トップの高さは十分。払い打ちでもヘッドが球を上げてくれる
ドライバー&FWは
“運ぶ”クラブ
――周りの選手との飛距離の差を埋めるために、ドライバー選びで重視しているのはどんなことですか?
青木 そもそも差を埋めるという考えはないですね。飛ばないものは飛ばないですから(笑)。私にとってドライバーは、得意なUTにつなぐためのクラブです。2打目でグリーンオンを狙うにしろレイアップするにしろ、できるだけいい場所から打ちたい。そのためには距離を稼ぐよりも、左右のブレ幅を少なくしたいんです。だから弾道も風の影響が少ない低い球のほうがいい。
――理想のバックスピン量はどのくらいですか?
青木 調子がいいって思うときのほうが少なく出ます。2000回転だと、やったぁ!ってなるくらい(笑)。FWにも同じく距離は求めません。次打でどれだけ勝負しやすい場所に置けるかが何より重要です。
弾道はティーアップの高さで調整します
風の影響を受けたくない時は、ティーアップの高さを指1本分程度まで低くすることもあるという。ジュニア時代から「直ドラ」をよくやっていたこともあり、その経験が生きている
青木瀬令奈の低弾道ショット
低いティーで3Wのように払い打つ
弾道を低く抑えたいときは、ティーアップを低くしボールを半個分右足寄りにセットする。スウィングはFWのように、低く長いインパクトを作るイメージでヘッドを動かす
大西翔太のワンポイントレッスン
両肩のラインを水平に
低めの安定した弾道で飛ばすには、アドレスで両肩のラインを水平にセットする。ボールを上げようと右肩を下げると、インパクトで打点が安定しない
フォローで低い目線をキープ
フォローで目線を低くすることで、上半身の起き上がりがなくなる。結果、インパクトゾーンでロフトが立った状態を長くキープすることができ、ボールを強く押し出せる
週刊ゴルフダイジェスト2024年2月13日号より