【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.146「3Dのヤーデージブック」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Hiroyuki Okazawa
あるコースで3Dのヤーデージブックを売っていて、それが普通のヤーデージブックの3倍くらいの値段しとるんですよ。僕は買っていないし、中身を開けて見たわけやないけれど、3Dというからにはたぶん、グリーン上の傾斜やフェアウェイの勾配などを色の濃淡で表しているのかなという想像はつきます。
背景には2022年のルール変更による『グリーンブック』の持ち込み禁止があるんやと思います。
グリーンブックには、グリーン面のマウンドなんかが等高線で描いてあり、ボールの転がりは矢印でわかるし、方向や速さなんかも詳細に書かれていました。だから、その代わりになるような立体的なイラストでホールを描き3Dと称したのかなと推測します。
でもよくよく考えれば、人間の目は3Dで見ておるわけやから、それって必要あるんか、とも思うんですよ。もちろん、僕が考えとるんとは全然中身が違うもんで、3倍のお金を出してもいいものなのかもしれませんけど。
僕は基本的にヤーデージブックは持たないです。ただ、ホールによってはターゲットを近く見させたり、遠く見させるといった錯覚をさせるような仕掛けや景色も入ってきますから、コース内のヤーデージも、レーザーを使っての計測も目安として使います。でもそれで迷ったときは、最後は自分の感覚のほうを頼りにして打ちます。
でも、イギリスに行ったときはヤーデージブックを買いました。コース内に何も表示がないゴルフ場があって、それで、エッジから何ヤードと書いてあるシンプルなヤーデージブックは買いました。
リンクスって平原みたいなところでしょ。さすがに何も目安がないとわからんですわ。これは6番くらいやなあと思っとっても、えっ、ショートアイアンの距離しかないの? とか、そんなんありますからね。
そういえば、8月の全米女子オープンに出場していた木下彩選手は、レーザーも使わんし、距離も測らないそうやけど、すごいね。そういう“感覚”でプレーをしている若い選手がいるというのはほんまに嬉しいですわ。僕かてレーザー使うのに、本当に測っていないでどんなラウンドをするのか、今度、応援がてら見に行きたいです。
「木下彩選手の“感覚”ゴルフ、見てみたいですね」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2023年9月26日号より