Myゴルフダイジェスト

【PGAツアーエキスプレス】Vol.23 スコッティ・シェフラー「対峙するのは人ではなくコース」

ゴルフの最先端、PGAツアーの旬なネタをお届けする「PGAツアーエキスプレス」。第23回のテーマは、スコッティ・シェフラーについて。

PHOTO/Blue Sky Photos 取材/コーリー・ヨシムラ(PGAツアー アジア担当ディレクター)

スコッティ・シェフラー 1996年生まれアメリカ出身。昨年のマスターズで初のメジャー制覇を飾った。豪快なスウィングから放たれるフェードボールが最大の武器
前回のお話はこちら

シェフラーの凄みは相手に左右されないこと

昨年2月のWMフェニックスオープンに優勝し、アーノルド・パーマー招待、デルテクノロジーズ・マッチプレーにも勝ち世界ランク1位になった。その勢いのまま、マスターズまで勝った。スコッティ・シェフラーは昨年の2月から、一気にPGAツアーのトップへ駆け上がった。もちろん、昨年の年間優勝選手にも選ばれた。今年も世界ランク1位で乗り込んだマスターズだったが、優勝には届かなかった。それでも、世界ナンバー1の実力を随所に見ることができた。

シェフラーは一見すると、彗星のごとく出現したかのように思われがちだが、彼をよく知る人からすればそれは違う。シェフラーが10歳のころから一緒にプレーしていた、5歳上のジョエル・エドワーズは「よく負けたもんだよ。いくら小遣いをあげたかわからないね。彼の技術は10歳のレベルではなかったよ。うだるような暑さでも彼はいつも長ズボンをはいていたのが特徴だった」と話す。

彼の勢いは一過性のものという見方もあった。強さは誰もが認めるところだが、スウィングは個性的で“今風”ではない。そんなこともそう思われた理由のひとつかもしれない。しかし、シェフラーはそんな声を結果でねじ伏せた。今年、WMフェニックスオープンで2連覇を達成すると、ザ・プレーヤーズ選手権では2位に5打差、過去最大差の圧倒的な強さで優勝を飾った。今シーズンは2打差以内で勝負が決まる試合が多く、これだけの大差での決着はほぼない。そういう意味では、シェフラーの強さが示されたことになる。

ザ・プレーヤーズ選手権の2日目が終わり、トップと2打差だったシェフラーは次のように話した。

「とても良い状態にあると思う。成長を感じているしたくさんのことを学んでいる。優勝争いに加わり、重要な局面を経験するたびにさらに多くのことを学ぶことができている」

シェフラーは優勝争いを楽しむとか、自分のプレーに集中するとか“対人間”ではゴルフを捉えていない。対峙するのは、あくまでもコースだ。

「人のプレーはコントロールできない。だから、いつものようにゴルフコースを相手に戦うだけ。それがもっとも大事なことだ」と話している。何が起きてもひょうひょうとしているのは、まさにコースと戦っているから。これこそ、シェフラーの強さだ。

月刊ゴルフダイジェスト2023年6月号より