【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.116「これで最後かと思った1次予選を通過。福沢さんのおかげです」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Hiroshi Yatabe
昨シーズンはショットイップスになったりしてシニアツアーでシード落ち。
もうそろそろ競技のゴルフは終わりやなと思っていたんです。それで、最後になるかなという思いで12月1日と2日に高坂CC(埼玉)で開催された1次予選会に出たんですが、これがなんとか通りました。
初日は3オーバー17位タイで、予選通過ライン(上位16名)に入るためには2日目はちょっと頑張らなあかんなという状況でした。
当日は風が強かったんですが、低い球で何とかなるやろうという気持ちで臨みました。
ただ高坂は小さなまんじゅう形の2グリーンで、当たりの悪いボールは全部グリーンを出ていくというコースで、おそらく6つある予選会で一番難しいコースを選んだなと思うたけど、まあやるしかない。
2日目の組み合わせは福沢孝秋さんとやったんですが、1番、2番での福沢さんのプレーを見て、ハッとしました。
70歳なんですけれどボールは飛ぶし、なによりプレーが早いんですわ。80センチくらいのパットは全部「お先」です。あんな大事な試合で80センチをボンボンお先にいく人なんてそうはおりまへん。カップをオーバーして2回ほど外してましたけど、要らんことはゴチャゴチャ言いません。
その福沢さんのプレーを見て、「ああコレやな」思うたんです。
予選会特有の、気持ちがグーッとなって固まって、粘って粘ってという感覚は0パーセントで、普段通りにパーン、パーンと打っていく。いつも通りに打つということですわ。
ここではこのクラブでこの球を打つと思ったらサッサと打つ。サッサと回るとゴルフが本当によいリズムになります。
それで3番ホールからは、とにかく粘らない、自分の感覚でやってダメやったらしゃあない。そういう気持ちになれたんです。結局、福沢さんと僕は共に6オーバーで1次予選を通りました。
ラウンド後に、「福沢さんと回ったから通れました。福沢さんのおかげですわ」言うと、「なに言ってんだよ奥ちゃん。俺なんかチョーンと打ってるだけだよ」言うていましたけど、「それがなかなかできへんのですわ」とお礼を言いました。本当にすごい人です。
「サッサと打ってボンボンお先してゴチャゴチャ言わんのです」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2023年2月14日号より